Sakura addictionに漂う倦怠感(好きな曲紹介)

僕が好きな曲のひとつに、SPLAYというバンドのSakura addictionがある。

家庭教師ヒットマンリボーンというアニメのエンディングだった曲だ。

 

好きな歌詞はサビから入ったあとのAメロの

 

いつもの改札を 擦り抜けて行くあの子はそう
輝く目をして 毎日何か掴み取って行くんだ
ぼくはと言えば 何にも無い毎日繰り返して
苦いビール持ってさ 空けようかどうか悩んで夜が明ける

 

というところだ。

 

その中でも特に好きなところは「苦いビール」という部分で、

ビールに頼ろうとしているのに対して、まだビールを苦く感じているところに大人になり切れない若さが感じられて、妙な現実感があっていい。

 

また、彼女が毎日成長しているのに対して、自分は何もない毎日を過ごしているという表現が刺さった。

情熱を失ってしまいただ毎日を惰性で生きている人間が、周りの情熱をもった人間に劣等感を感じる気持ちが歌詞に現れていて、

同じ気持ちを持った自分を受け入れてくれたような気がしたからだと思う。

青年期の無気力さ、憂鬱さ、倦怠感の表現が俊逸だ。

YouTubeのコメント欄にも同じことが書いてあった)

 

個人的にこの歌詞とよく似ているのと思うのが、秒速5センチメートルという映画である。

この映画は三部構成になっているのだが、特に似ているのが3作目の「秒速5センチメートル」だ。

簡単に説明すると、主人公が子供のころ相思相愛だった女の子と両親の転勤で遠く離れてしまい、主人公が彼女との恋を忘れられぬまま大人になるというストーリーだ。

 

彼女が結婚し、主人公との恋を思い出にしているのに対して、

主人公は過去の恋にとらわれて、部屋にはビールの空き缶が転がり、落とした鍵を少しの間拾うこともせず、会社を辞めてしまうシーンではこの曲に似た倦怠感、無気力さが漂っている。

 

Sakura addictionに話を戻すと、2番以降の歌詞はこんな風に続く。

 

汚れたスパイクなら 心の奥に仕舞い込んだ
「これでいいんだよ」と
過ぎゆく春の逃げ道 探してるんだろう

無くして 諦めたボール
見つけてくれたのはきみでした

春が来る 咲き誇る グランドが風に揺れる
踏みしめて 泣き出した 溢れそう きみみたいな花

 

主人公は昔スポーツに打ち込んでいたが、現在は「これでいいんだよ」と諦めていた。

しかし、「毎日何かを掴み取っていくあの子」に影響されて、前に歩き出したことがわかる。

実際に彼がもう一度スポーツを始めたのか、別の道へ進んだのかはわからないけれど(後者のような気がするけど)、

過去の呪縛から解き放たれた感じがして、

1番では希望が見えないのに対して、2番以降で希望が感じられるのがよい。

 

ちなみにSPLAYというバンドはアルバムを2枚だけだして、10年ほど前に解散してしまった。

僕は倦怠感の漂う、諦観的な歌詞が好きなので、このような表現ができるアーティストが解散してしまったことを残念に思う。

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